本日は第5回ホラーサスペンス大賞受賞作。
9月が永遠に続けば 沼田まほかる (新潮文庫)
ホラーサスペンス大賞って言うのは2000年から2005年まであったちょっと変わった賞。誉田哲也や道尾秀介もこの賞出身らしいです。第5回ってことは2004年ですね、わお、結構昔でした。沼田まほかる先生のデビュー作に当たるそうです。私が読んだのは確か10年ほど前で、先週ふと思い立って読み直しました。どの小説でもそうだと思いますが、読んだ時期とか年齢によって印象が異なります。
10年前も今も変わらないのは「これはサスペンスじゃなくてホラーだろ」って言う感想です。怖い。とにかく。非常に醜いものが綺麗な文章で書かれているのでつい読んでしまうのですが、小説ってだから怖い。これ、漫画や映画では無理。
主人公の佐知子は40台前半の主婦。9年前別れた夫に未練たっぷり。そんな彼女の高校生の一人息子が失踪してしまいます。ホラーだろって言っても超常現象的な表現は、せいぜいこの一人息子が恋に落ちたシーンぐらいなんですが。
10年前は佐知子に対する嫌悪感が凄かったんだけど、今回は全然そんなことなかった。むしろ佐知子が長年の前夫(とんでもねー俗物)に対する未練をすっぱりなくしたところとか気持ちよかったしね。10年前はこんなとこ読み流してた。年取ったのかなあ、私も。
人間は二種類に分かれる。美しく弱いものを壊したい衝動を持つ人間と、守りたいと思う人間。10年前読んだ時はそう思ったんだけど、これはそうじゃなくて、美しく弱いものを壊したい衝動を理性で思いとどまる人間と、そうでない人間。衝動を持っているけど思いとどまる人間と、元々そんな衝動を持ってない人間は区別できない。
まあ、なんにせよ、この話で一番気の毒なのは一人息子と冬子だったと思う。10年後にもう一回読みたい本。
ちなみにこういう引きずりたくない気持ちを引きずっちゃいそうな本を読んだ時は、今野敏先生の小説で中和するのがオススメです
ご主人さま、湊かなえ読んだ時とか必ず今野作品読みますよね
今野先生の小説があるから、どんな小説も安心して読める。ありがたや、あの読後感
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