未分類

夢魔と魔術師

ここは、どこだろう。 とても静かな場所だ。豊かな下草と雑木が生い茂っている。一見森の中のように見えるのに、ほとんど生き物の気配がしない。風ひとつ吹かず、動くものがない。この木々も、実際に生きているのか怪しいものだ。 誰よりも長い時間を生き、...
妄想の函

夢のあとさき

「おはようございます、MC。良い朝ですね」 笑顔のバルバトスが朗らかに、唄うように挨拶する。 彼は優しくわたしの頬を撫でてから、両手で恭しくその首を持ち上げた。 目を閉ざしたまま、挨拶を返すこともないわたしの首を、しばらく愛おしそうに見つめ...
妄想の函

天使を喰む

シメオンの瞳は、いつか見た天界の青空の色。  それがまあるく大きく見開かれて、彼の上に馬乗りになったわたしを見上げている。 首尾は上々。 なんとしてもこのミッションを遂行してみせる。「えっと……どうして、こんなことになってるのかな?」 それ...
妄想の函

わたしの可愛い悪魔

身体で愛し合うことを覚えたばかりの頃。わたしはディアボロが好きだという気持ちだけを大事に抱えて、ただ彼の熱に翻弄されていた。ディアボロはとても優しかったけれど、容赦のない快楽に攫われ、ただ身を任せるしか術はない、それは被食にも似た行為だった...
妄想の函

坊っちゃま、これは恋ではありません

メフィストフェレスが生まれる前から使用人としてこの屋敷で働いていて、物心ついた頃には世話役として側にいた伊吹。この世に生を受けてから、ずっと。いつだって、メフィストフェレスを導いてくれるのは伊吹だった。初めてポニーに乗った時も、初めて夜会に...
妄想の函

天使の境界

精一杯背伸びをしても、僅かに届かない。伸ばした指先の少し上にある本を、後ろから伸びてきた手が容易く取り出し、ルークに差し出した。「今日はシメオンと一緒じゃないんだね」 近頃やけに絡んでくる夢魔だ。卑屈な感じが、どうしても好きになれない。ルー...
妄想の函

LILITH ~ 恋する天使~

全ては、計画通り。 あの小面憎いルシファーが人間界からの留学生を溺愛しているという。メフィストフェレスも、RAD内を仲睦まじく歩く二人を度々見かけた。 あの人間の小娘をルシファーから奪ってやれば、やつはどんな顔をするだろう。最初はそんな単純...
妄想の函

ケセラセラ   〜紅茶派のあなた2〜

今日は、久しぶりの魔王城紅茶教室の日。 不定期に魔王城で開かれるこの紅茶教室は、殿下の思いつきから始まった。先生は魔王城のパーフェクト執事、生徒はわたし一人というとてもとても贅沢な教室。もちろん先生は多忙なので、頻繁に開かれるわけではない。...
妄想してみた

In his childhood

木枯らしが吹き荒ぶ寒い日。 ハールが青い閃光と共に執務室に現れたのは、午後の早い時間だった。 ゼロが事故で古い魔法薬を浴びてしまった。 その知らせを聞いたハールは、軍からの使いを魔法の塔に残したまま、単身魔法で瞬間移動してきたのだ。 突然現...
妄想してみた

Childhood’s end

ポットにお湯を注ぎ、紅茶が抽出されるのを待つ。手持ち無沙汰で窓の外をぼんやりと眺めていると、薄曇りの空から、ちらりちらりと白いものが舞い始めた。 どうりで朝から冷えるわけだ。 ハールは暖炉に薪を足した。 暖炉の前では、ここまで大はしゃぎで駆...