妄想の函

わたしの可愛い悪魔

身体で愛し合うことを覚えたばかりの頃。わたしはディアボロが好きだという気持ちだけを大事に抱えて、ただ彼の熱に翻弄されていた。ディアボロはとても優しかったけれど、容赦のない快楽に攫われ、ただ身を任せるしか術はない、それは被食にも似た行為だった...
妄想の函

坊っちゃま、これは恋ではありません

メフィストフェレスが生まれる前から使用人としてこの屋敷で働いていて、物心ついた頃には世話役として側にいた伊吹。この世に生を受けてから、ずっと。いつだって、メフィストフェレスを導いてくれるのは伊吹だった。初めてポニーに乗った時も、初めて夜会に...
妄想の函

天使の境界

精一杯背伸びをしても、僅かに届かない。伸ばした指先の少し上にある本を、後ろから伸びてきた手が容易く取り出し、ルークに差し出した。「今日はシメオンと一緒じゃないんだね」 近頃やけに絡んでくる夢魔だ。卑屈な感じが、どうしても好きになれない。ルー...
妄想の函

LILITH ~ 恋する天使~

全ては、計画通り。 あの小面憎いルシファーが人間界からの留学生を溺愛しているという。メフィストフェレスも、RAD内を仲睦まじく歩く二人を度々見かけた。 あの人間の小娘をルシファーから奪ってやれば、やつはどんな顔をするだろう。最...
妄想の函

ケセラセラ   〜紅茶派のあなた2〜

 今日は、久しぶりの魔王城紅茶教室の日。 不定期に魔王城で開かれるこの紅茶教室は、殿下の思いつきから始まった。先生は魔王城のパーフェクト執事、生徒はわたし一人というとてもとても贅沢な教室。もちろん先生は多忙なので、頻繁に開かれるわけではない...
妄想してみた

In his childhood

 木枯らしが吹き荒ぶ寒い日。 ハールが青い閃光と共に執務室に現れたのは、午後の早い時間だった。 ゼロが事故で古い魔法薬を浴びてしまった。 その知らせを聞いたハールは、軍からの使いを魔法の塔に残したまま、単身魔法で瞬間移動してきたのだ。 突然...
妄想してみた

Child hood’s end

 ポットにお湯を注ぎ、紅茶が抽出されるのを待つ。手持ち無沙汰で窓の外をぼんやりと眺めていると、薄曇りの空から、ちらりちらりと白いものが舞い始めた。 どうりで朝から冷えるわけだ。 ハールは暖炉に薪を足した。 暖炉の前では、ここまで大はしゃぎで...
妄想の函

 新聞部の部室は、同じ棟の、執務室とは逆の端にある。わざわざ執行部から一番離れた部屋を選ぶあたり、何をしようとしているのか怪しいものだといつも思う。 ルシファーは長い廊下を歩きながら、ふと自分の右手にあるワームに目をやった。 ほんのりと温か...
妄想の函

ルシファーの惑乱

 恋は、悪魔を狂わせる。 放課後の議場には、執行部だけではなくメゾン煉獄の面々も揃い、皆でテーブルを囲んでいた。テーブルには、バルバトスが用意した菓子や軽食が所狭しと並んでいる。 多少のトラブルはあったものの、なんとか今年も体育祭を無事終え...
妄想の函

内緒の殿下3

 太陽のない魔界は、わたしの母国のほど四季がはっきりしているわけではない。それでも月の色や、風の匂い、生き物の営みは四季と同じようなサイクルを繰り返している。  グリフォンの気が荒くなり、攻撃的になってしまうというこの季節。通学路やRADで...