妄想の函

紅茶派のあなた

 バルバトスに美味しい紅茶の淹れ方を習うために魔王城に通うようになってから、しばらく経つ。  この紅茶教室のきっかけは、殿下の一言だった。  殿下が人間界の話を聞きたがっているからと、ルシファーに連れられ魔王城を訪れた...
妄想の函

内緒の殿下2

 殿下に助けてもらったお礼を届けるために、RADの執務室を訪ねた。  お礼に選んだのは、ルシファーに教わった、殿下が最近お気に入りだという紅茶。  最初は思い切って手作りのお菓子を、と考えていたんだけど。兄弟たちの「殿...
妄想の函

内緒の殿下

 ——今日の会議には、MCも来るように。遅刻は厳禁だ。  朝食の時にルシファーにそう念を押されていたので、授業が終わってすぐに講義室を出て議場に向かった。  RADの作りはちょっとややこしくて、こっちに来たばかりの時は...
妄想の函

ルシファーの受難

 MCの無自覚の恋心は、まるで植物の芳香のように彼女の全身から立ち上り、甘くルシファーを誘う。  彼を見上げる瞳に、彼を呼ぶ声に、蜜のようにひそむ恋。それはまるで遅延性の毒のように、甘やかにルシファーを侵し始めた。  ...
妄想の函

ソロモンの災難

 油断した。  まさかあの短い詠唱が終わる前に殴られるとは思わなかったし、僕よりずっと小柄な、しかも人間の女の子のパンチで魔法陣の外までふっ飛ばされることは予測してなかった。  僕は数百年ぶりに情けなく、地面に尻をつけ...
妄想の函

ルシファーの逡巡

 書店を出たルシファーは、足を止め、訝し気に眉を寄せた。 (一体、何事だ……?)  視界にいるあらゆる悪魔たちが、熱望するような目で同じ方向を見つめている。  下級悪魔たちは、だらしなく口を開け、だらだらとよだれ...
妄想してみた

春雷

 レヴィは談話室のソファで鳥の図鑑を見ていた。  春になってから、兵舎の敷地内には様々な鳥が飛んできた。鏡の国に鳥はいなかったから、久しぶりに見る鳥が珍しくて眺めていると、レイが貸してくれたものだ。  レイの部屋にはた...
妄想してみた

春のとまりの森の家

 豊かな緑の隙間から、麗かな日差しがこぼれる森の奥。春らしい明るさの中、森の空気はいつもどおり少し冷たく、しんと透きとおっている。  クレイドルの大魔法使いハールの家は、そんな場所にひっそりと在る。      ...
妄想してみた

春隣

 クレイドルの長い長い冬も終わりに近づき、そこここに春の気配が香り始めていた。街を行き交う人々の表情も、心なしか明るい。  そんな中、ルカ、エドガー、ゼロの3人はセントラルのカフェで、困り顔を寄せ合っていた。 「ごめん...
妄想してみた

寒い夜

 歌声が聞こえる。  ディーンは薄く目を開いた。  辺りは薄暗く、頬に机の冷たい固さを感じた。  ――ああ、また本を読みながら寝てしまったのか。  意識が覚醒するにつれて、少しずつ違和感を感じる。机の高さも...
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