妄想の函 ルシファーの受難 MCの無自覚の恋心は、まるで植物の芳香のように彼女の全身から立ち上り、甘くルシファーを誘う。 彼を見上げる瞳に、彼を呼ぶ声に、蜜のようにひそむ恋。それはまるで遅延性の毒のように、甘やかにルシファーを侵し始めた。 現実なのか、毒の見せる都... 2021.05.31 妄想の函
妄想の函 ソロモンの災難 油断した。 まさかあの短い詠唱が終わる前に殴られるとは思わなかったし、俺よりずっと小柄な、しかも人間の女の子のパンチで魔法陣の外までふっ飛ばされることは予測してなかった。 俺は数百年ぶりに情けなく、地面に尻をつけていた。 どこか表情に... 2021.05.05 妄想の函
妄想の函 ルシファーの逡巡 書店を出たルシファーは、足を止め、訝し気に眉を寄せた。 (一体、何事だ……?) 視界にいるあらゆる悪魔たちが、熱望するような目で同じ方向を見つめている。 下級悪魔たちは、だらしなく口を開け、だらだらとよだれを垂らしていた。中には酔っ払い... 2021.05.05 妄想の函