妄想の函

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夢のあとさき

「おはようございます、MC。良い朝ですね」 笑顔のバルバトスが朗らかに、唄うように挨拶する。 彼は優しくわたしの頬を撫でてから、両手で恭しくその首を持ち上げた。 目を閉ざしたまま、挨拶を返すこともないわたしの首を、しばらく愛おしそうに見つめ...
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天使を喰む

シメオンの瞳は、いつか見た天界の青空の色。  それがまあるく大きく見開かれて、彼の上に馬乗りになったわたしを見上げている。 首尾は上々。 なんとしてもこのミッションを遂行してみせる。「えっと……どうして、こんなことになってるのかな?」 それ...
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わたしの可愛い悪魔

身体で愛し合うことを覚えたばかりの頃。わたしはディアボロが好きだという気持ちだけを大事に抱えて、ただ彼の熱に翻弄されていた。ディアボロはとても優しかったけれど、容赦のない快楽に攫われ、ただ身を任せるしか術はない、それは被食にも似た行為だった...
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坊っちゃま、これは恋ではありません

メフィストフェレスが生まれる前から使用人としてこの屋敷で働いていて、物心ついた頃には世話役として側にいた伊吹。この世に生を受けてから、ずっと。いつだって、メフィストフェレスを導いてくれるのは伊吹だった。初めてポニーに乗った時も、初めて夜会に...
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天使の境界

精一杯背伸びをしても、僅かに届かない。伸ばした指先の少し上にある本を、後ろから伸びてきた手が容易く取り出し、ルークに差し出した。「今日はシメオンと一緒じゃないんだね」 近頃やけに絡んでくる夢魔だ。卑屈な感じが、どうしても好きになれない。ルー...
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LILITH ~ 恋する天使~

全ては、計画通り。 あの小面憎いルシファーが人間界からの留学生を溺愛しているという。メフィストフェレスも、RAD内を仲睦まじく歩く二人を度々見かけた。 あの人間の小娘をルシファーから奪ってやれば、やつはどんな顔をするだろう。最初はそんな単純...
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ケセラセラ   〜紅茶派のあなた2〜

今日は、久しぶりの魔王城紅茶教室の日。 不定期に魔王城で開かれるこの紅茶教室は、殿下の思いつきから始まった。先生は魔王城のパーフェクト執事、生徒はわたし一人というとてもとても贅沢な教室。もちろん先生は多忙なので、頻繁に開かれるわけではない。...
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新聞部の部室は、同じ棟の、執務室とは逆の端にある。わざわざ執行部から一番離れた部屋を選ぶあたり、何をしようとしているのか怪しいものだといつも思う。 ルシファーは長い廊下を歩きながら、ふと自分の右手にあるワームに目をやった。 ほんのりと温かい...
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ルシファーの惑乱

恋は、悪魔を狂わせる。 放課後の議場には、執行部だけではなくメゾン煉獄の面々も揃い、皆でテーブルを囲んでいた。テーブルには、バルバトスが用意した菓子や軽食が所狭しと並んでいる。 多少のトラブルはあったものの、なんとか今年も体育祭を無事終える...
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内緒の殿下3

太陽のない魔界は、わたしの母国のほど四季がはっきりしているわけではない。それでも月の色や、風の匂い、生き物の営みは四季と同じようなサイクルを繰り返している。  グリフォンの気が荒くなり、攻撃的になってしまうというこの季節。通学路やRADでグ...