新聞部の部室は、同じ棟の、執務室とは逆の端にある。わざわざ執行部から一番離れた部屋を選ぶあたり、何をしようとしているのか怪しいものだといつも思う。 ルシファーは長い廊下を歩きながら、ふと自分の右手にあるワームに目をやった。 ほんのりと温かい...
ルシファーの惑乱
恋は、悪魔を狂わせる。 放課後の議場には、執行部だけではなくメゾン煉獄の面々も揃い、皆でテーブルを囲んでいた。テーブルには、バルバトスが用意した菓子や軽食が所狭しと並んでいる。 多少のトラブルはあったものの、なんとか今年も体育祭を無事終える...
内緒の殿下3
太陽のない魔界は、わたしの母国のほど四季がはっきりしているわけではない。それでも月の色や、風の匂い、生き物の営みは四季と同じようなサイクルを繰り返している。 グリフォンの気が荒くなり、攻撃的になってしまうというこの季節。通学路やRADでグ...
🐉9 つるバラの顛末を聞いても、バルバトスは悲しそうな顔は見せなかった。ただ、みなさんがご無事でよかった、ときれいに微笑んだ。 だけどガゼボの影に、呪いの影響を受けずに生き残っていたつるバラの株を見つけた時は、とても嬉しそうだった。 きれい...
🐉6「実は、数日前から、反対派の連中に妙な動きがあると聞いていた。だから、君を保護するつもりで魔王城に来てもらうことにしたんだ。それなのに、かえって君を危険な目に合わせてしまった。本当に申し訳ない」「私とルシファーもその情報がずっと頭にあっ...
内緒の殿下 〜誕生祭2021編〜
🐉1 魔界のハロウィンは、殿下の誕生祭。誕生日当日と、前夜祭、後夜祭合わせて3日間、魔界のあちこちで殿下の誕生日を祝い、彼を讃える祭典やパーティーが催される。 ここ魔界での「ハッピーハロウィン」の挨拶は、「殿下お誕生日おめでとう」と言う意味...
おまけの殿下
うねうねと。無脊椎動物の足らしきものがうねりながら伸びている。その動きは、オズワルドの水色の足によく似ているが、色は彼のものよりずっと暗い、夜の海の色をしていた。意のままに動かすことができたので、それが自分の足だとすぐに理解できた。 うねり...
仔犬のワルツ
今年のゼロの誕生日は、去年の宣言通り、公会堂のホールで盛大に祝われることになった。 アンリが来る前から、夜会の警備はエースの隊が引き受けるのが習慣になっていたので、礼服を来てフロアに立つゼロを見るのは初めてだ。 だけどゼロは気負った様子もな...
内緒の殿下 〜魔界の太陽 編〜
魔界には太陽がない。「人間界の太陽が恋しいかい?」 あれは、初めて殿下と二人で迎えた朝。 彼が、ぽつりと尋ねた。「……少しだけ」 本当は、朝日の昇らない朝を迎えるたびに、太陽を恋しく思っていた。だけどそれを殿下に伝えるのはなんだか申し訳ない...
紅茶派のあなた
バルバトスに美味しい紅茶の淹れ方を習うために魔王城に通うようになってから、しばらく経つ。 この紅茶教室のきっかけは、殿下の一言だった。 殿下が人間界の話を聞きたがっているからと、ルシファーに連れられ魔王城を訪れた時のこと。 当時は、バルバト...